杭菊茶について

歴史

台湾杭菊茶の起源は、中国杭州市の伝統的な杭白菊に由来します。杭白菊は、約1000年以上の歴史を持つ中国の伝統的な菊花茶で、宋代（960年～1279年）にはすでに高品質な薬膳茶として広く知られていました。中国杭州市は、肥沃な土壌と温暖な気候が菊の栽培に適しており、杭白菊の一大生産地として発展しました。その後、明代（1368年～1644年）から清代（1644年～1912年）にかけて、杭白菊の生産技術がさらに洗練され、中国全土や海外に輸出されるようになりました。

台湾に杭菊が伝わったのは、清朝時代の19世紀頃とされています。当時、中国本土から台湾へ茶葉や農業技術が広まる中で、杭白菊の栽培技術も台湾へ伝えられました。その後、日本統治時代（1895年～1945年）には、台湾茶産業の近代化とともに杭菊の栽培が改良され、台湾特有の杭菊茶が作られるようになりました。特に台湾中部の苗栗県や南投県は、昼夜の温度差が大きく、肥沃な土壌と湿度の高い気候が菊の栽培に適していたため、杭菊の主要生産地として発展しました。

台湾杭菊茶は、台湾の風土に適応する中で、中国杭白菊とは異なる個性を持つようになりました。台湾産の杭菊は、香りがより清らかで、甘味が際立つのが特徴で、現地の人々に健康茶として広く親しまれるようになりました。特に現代では、台湾杭菊茶がストレス緩和や目の疲れを癒す効果で注目され、国内外で人気が高まっています。

生産環境

台湾杭菊茶は、主に苗栗県銅鑼郷九湖村で栽培されており、この地域の豊かな自然環境が高品質な杭菊茶を生み出しています。標高300～400メートルの地域では、昼夜の温度差が大きく、霧が頻繁に発生するため、菊の花がゆっくりと育ち、香りや甘味が濃縮されます。土壌はミネラルを豊富に含む粘土質や砂質で、水はけが良く、杭菊の健全な成長を支えています。栽培は無農薬または低農薬で行われることが多く、環境に優しい方法で管理されています。収穫は秋に行われ、満開の菊を丁寧に手摘みし、乾燥させて茶葉として加工します。この自然環境と手間をかけた製法が、台湾杭菊茶の清らかな香りと優しい甘味を生み出す要因となっています。

茶葉

乾燥された菊の花そのものが茶葉として使用されており、白く繊細な花弁が特徴です。満開の状態で収穫され、花の形を崩さないように丁寧に乾燥されているため、美しい花の形状がそのまま残ります。淹れると水中で花が再び開く姿が視覚的な魅力を与えます。

香り

香りは清らかで上品なフローラル調が特徴です。杭菊特有の甘く優しい花の香りが立ち上り、リラックス効果を促します。自然乾燥による香り付けが主流で、人工的な香料を使わず、純粋な菊の香りが楽しめます。

味わい

味わいは、軽やかで爽やかさを感じる飲み口の中に、ほのかな甘味が広がります。苦味や渋味が少なく、口当たりが滑らかで、飲みやすいのが特徴です。後味には菊花特有のすっきりとした清涼感が残ります。

発酵度

杭菊茶は発酵を行わない「不発酵茶」に分類されます。これにより、菊の花が持つ天然の香りや成分がそのまま保存され、茶本来の風味を損なうことなく楽しむことができます。

焙煎程度

杭菊茶は「不焙煎茶」に分類されます。これにより、菊花の自然な香りと色合いが保たれ、見た目にも美しく、香り高いお茶が完成します。

楽しみ方・淹れ方

お湯の温度：80～90℃程度のお湯が最適です。沸騰したお湯をそのまま使用する場合は、少し冷ましてから注ぐことで、花の香りや甘味が引き立ちます。熱湯を使いすぎると香りや風味が損なわれる場合があるため、控えめな温度で淹れるのがおすすめです。
茶葉の量　：ティースプーン1杯（約2-3g）の茶葉をティーカップ1杯分で2-3煎お飲みいただけます。
抽出時間　：3分～5分程度を目安に浸出します。花が完全に開いて香りが立ち上るまで待つことで、杭菊茶特有の優雅な香りと味わいが楽しめます。
楽しみ方　：杭菊茶は、その清らかな香りとほのかな甘味を楽しむため、ストレートで飲むのがおすすめです。見た目にも美しい菊の花が湯中で開く様子を楽しむために、透明なガラスのティーポットやカップを使用するのも良いでしょう。夏場には冷やしてアイスティーとして楽しむと、爽やかさが際立ちます。また、ノンカフェインのため、特に就寝前などカフェインを気にすることなく一日中楽しむことができます。妊娠中や授乳中の方、小さなお子様にも安心して楽しめる点も魅力です。